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高塗着スプレー塗装

「鋼道路橋塗装・防食便覧」の改訂と「高塗着スプレー塗装工法」

 鋼橋塗り替え塗装では、標準的な仕様として一般環境では「a塗装系」、やや厳しい環境条件では「b塗装系」が採用されてきましたが、 これらの仕様では必ずしも長期間に亘って安定した防食性能を保証することができず、50年、100年といった長いスパンにおいては、トータルとして維持管理費が増大するということがありました。
 これらの維持管理費の縮減を進めるため、長期間に亘って優れた「防食性」と「耐候性」を発揮する塗装仕様が求められるようになり、平成17年12月に改訂された「鋼道路橋塗装・防食便覧」では、 「c塗装系」が標準的な塗替え塗装仕様として明記されました。

a塗装系 3種ケレン~鉛系さび止め~長油性フタル酸樹脂系中・上塗り
b塗装系 3種ケレン~鉛系さび止め~フェノール樹脂系MIO~塩化ゴム系中・上塗り
c塗装系 1種ケレン~ジンクリッチペイント~エポキシ樹脂系下塗り~ふっ素樹脂系中・上塗り

 この「c塗装系」の有する長期耐久安定性を最大限に発揮させるためには、「均質な塗膜を一定の膜厚以上で確保すること」が必要となります。
 「鋼道路橋塗装・防食便覧」に、素地調整方法として「1種ケレン(ブラスト処理)」、塗装方法として「スプレー塗装」が明記されたのは、「c塗装系」の有する 優れた防食安定性を確保するために、旧塗膜を全面的に除去してむらのない均質な塗膜の形成を行うためです。
  「c塗装系」は極めて安定した「防食性能」を有しているため、通常の場合、数十年の範囲においてはほぼその性能を維持することが確認されています。 「耐候性能」においても長期間に亘って安定した性能を発揮しますが、光沢の低下や白亜化等によって上塗り塗膜の消耗が徐々に進行してゆきます。 このため、上塗りや中塗りの消耗が進んだ時点で、4種ケレンによる表層の清掃処理だけの簡易で経済的な「塗替え塗装」が可能となるのです。
 これらの考え方は、本州四国連絡橋等で経済的、効率的な維持管理が行われていることなどでも実証されてきています。

素地調整程度と作業内容

素地調整程度 さび面積 塗膜異常面積 作 業 内 容 作業方法
1 種 - - さび、旧塗膜を完全に除去し鋼材面を露出させる。 ブラスト法
2 種 30%以上 - 旧塗膜、さびを除去し鋼材面を露出させる。
ただし、さび面積30%以下で旧塗膜がB、b塗装系の場合はジンクリッチプライマーやジンクリッチペイントを残し、他の旧塗膜を全面除去する。
ディスクサンダー、ワイヤホイルなどの動力工具と手工具との併用、ブラスト法
3種A 15~30% 30%以上 活膜は残すが、それ以外の不良部(さび、われ、ふくれ)は除去する。 同 上
3種B 5~15% 15~30% 同 上 同 上
3種C 5%以下 5~15% 同 上 同 上
4種 - 5%以下 粉化物、汚れなどを除去する。 同 上

(鋼道路橋塗装・防食便覧より)

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高塗着スプレー塗装工法とは

 鋼橋の塗付作業にはエアレススプレー塗り、はけ塗り及びローラーブラシ塗りの3種類の方法が用いられますが、現場での塗替え塗装では、古くから塗料の飛散が少なく、 周辺環境や作業環境への影響が少ない「はけ塗り」が用いられてきました。
 しかし、人力による「はけ塗り」は施工能率が低く、塗装品質が塗装工の技能に左右され、厚膜に塗付するためには塗付回数を増やすことが必要となる等の問題がありました。
 これに対して「エアレススプレー塗り」は、施工能率が高く、塗料を均一な厚さに塗付しやすい方法で、厚膜形塗料の塗付に適していますが、噴霧された塗料(スプレーミスト)が 飛散しやすいことから、現場での鋼橋塗替え塗装で用いられた例は少なく、主に飛散防止対策が講じやすく、周辺環境への影響が少ない工場内での塗装に多く用いられてきました。
 現在、現場での鋼橋塗替え塗装については、「機械化による施工能率及び塗装品質の向上」が求められており、「鋼道路橋塗装・防食便覧」(平成17年12月発行)には、 鋼橋塗り替え塗装にあたって「低飛散型スプレーや静電スプレー及びスプレーミスト飛散防護シートの適用」が明記されました。
 当協会が開発した「高塗着スプレー塗装工法」は、「塗着効率が高く、塗料の飛散が極めて少ない塗装工法」で、既に国土交通省や名古屋高速道路公社等において鋼橋の塗替え塗装に採用され、 平成19年6月1日にはNETIS(新技術情報提供システム:国土交通省が運用している新技術に係る情報を共有及び提供するためのデータベース)に登録されています。

高塗着スプレー塗装下塗風景

高塗着スプレー塗装 施工中(下塗)

高塗着スプレー塗装中塗風景

高塗着スプレー塗装 施工中(中塗)

NETIS登録

登録日      平成19年6月1日
新技術名称   高塗着スプレー塗装
登録番号    HR‐050017-V

特許

・特許第3991091号(発明の名称:橋梁の塗装装置) PDFマーク PDFファイル
・特許第4230711号(発明の名称:鉄鋼構造物の静電塗装方法) PDFマーク PDFファイル

特許

・高塗着スプレー塗装工法パンフレット  カラー/2.7MB PDFマーク PDFファイル

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高塗着スプレー塗装工法のシステム

 エアーアシスト方式静電塗装ガン、静電コントローラ、電動エアレスポンプ、エアーコンプレッサ、導電性飛散防護メッシュシートにより構成されます。

高塗着スプレー工法

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高塗着スプレー塗装工法の特徴

塗着効率を高めるための工夫

1.スプレーミスト(噴霧された塗料)を帯電させます。(静電塗装)

 「エアーアシスト方式静電塗装ガン」の先端にある電極に、-60kVの高電圧をかけることにより、スプレーミストにマイナスの静電気を帯電させ、 アースされた被塗物との間に生じる静電気力を利用して、スプレーミストを被塗物(構造物)に吸着させます。電流値は最大でも60μAとごく微弱で感電する恐れはありません。
【ポイント】
 高塗着スプレー塗装工法では、下記3.での説明のとおり、低い圧力で噴霧することにより、風の影響を受け飛散しやすい小粒子の発生を抑えていますが、 完全にこれがなくなるということではありません。しかし、スプレーミストをマイナスに帯電させることにより、被塗物との間に静電気力が生じて、このような小粒子の塗料まで被塗物に 付着させることが可能となり、塗着効率が向上しました。

2.帯電したスプレーミストを「補助エアー」に包み込み塗付します。

 「高塗着スプレーノズル」から出される「補助エアー」により、扇形のスプレーミストを包み込み、横風による飛散を防ぎます。

エアスプレーと補助エアの流れ

3.低い圧力で噴霧します。

 スプレーミストの粒子は、その全てが同じ大きさにはならず、大きな塗料の粒子から小さな塗料の粒子までが混在しています。
 スプレーミストの粒子が小さくなるほど、塗膜の仕上がりは良くなりますが、風の影響を受け飛散しやすくなります。これとは逆にスプレーミストの粒子が大きくなるほど、飛散しにくくなりますが、 塗膜の仕上がりは粒子が小さい場合より劣ります。
 屋外で行われる鋼橋塗り替え塗装作業は、常に風の影響を受けることになるため、高塗着スプレー塗装工法では、スプレーミストが飛散しないことを優先しながら、適度な塗膜に仕上げるため、 低い圧力で噴霧します。
 【ポイント】
 低い圧力で噴霧することにより、スプレーミストの粒子は、風の影響を受けにくく、飛散しにくい中粒子から大粒子となります。これに上述の「静電気力」及び「補助エアー」が加わることで塗着効率が向上しました。
 低い圧力で噴霧することにより、スプレーミストが被塗物にあたって作業者の方に跳ね返る等の飛散を防ぐことができます。
 

スプレーミストの飛散防止を図るための工夫

1.飛散するスプレーミストを、導電性飛散防護メッシュシートにより捕らえます。

 【ポイント】

 作業区域の周囲に被塗物と同様にアースされた「導電性飛散防護メッシュシート」を設置します。被塗物に付着せず浮遊しているスプレーミストは、マイナスの静電気を帯電しており、 静電気力でこの「導電性飛散防護メッシュシート」に吸着されるため、「メッシュシート」の隙間を通り抜けることはできず、作業区域外に飛散することはありません。

スプレーミスト

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高塗着スプレー塗装工法のメリット

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高塗着スプレー塗装工法 施工実績(平成23年度末現在)

年度 発注元 工事箇所 施工面積[平方メートル]
平成10年 名古屋高速道路公社(試験施工) 10-6工区 340
平成11年 名古屋高速道路公社(試行発注) 11-9工区 3,300
平成12年 名古屋高速道路公社(試行発注) 12-1工区 2,880
平成13年 名古屋高速道路公社(試行発注) 13-5工区 9,447
平成14年 名古屋高速道路公社 14-5工区 8,312
14-6工区 8,618
14-7工区 9,573
平成15年 名古屋高速道路公社 15-1工区 14,698
15-2工区 13,589
15-3工区 12,159
15-4工区 12,420
平成16年 名古屋高速道路公社 16-1工区 10,456
16-2工区 17,147
16-3工区 15,289
16-4工区 11,490
16-5工区 12,343
16-6工区 20,178
平成17年 国土交通省/北陸地方整備局 早川橋 3,700
早川橋側道橋 2,000
名古屋高速道路公社 17-1工区 12,974
17-2工区 27,702
17-3工区 6,752
17-4工区 18,930
17-5工区 12,894
東北地方整備局 北川上下流河川事務所 北上大堰ゲート
首都高速道路株式会社(試験施工) 湾岸線(NO.湾3019から3021) 6,752
平成18年 国土交通省/中国地方整備局(寒冷地向け塗装仕様) 米子大橋 1,590
名古屋高速道路公社 18-1工区 21,532
18-2工区 19,732
18-3工区 25,735
18-4工区 16,927
18-5工区 19,084
18-6工区 17,468
平成19年 北陸地方整備局 新潟大橋(その1) 10,500
新潟大橋(その2) 8,500
稲葉川崎 3,500
洞川橋 2,200
蒲原大堰管理橋 5,290
信濃川水門管理橋 2,140
名古屋高速道路公社 19-1工区 11,062
19-2工区 9,450
19-3工区 10,899
19-4工区 8,729
19-5工区 12,955
秋田県/山本地域振興局 大沢橋 1,520
秋田県/仙北地域振興局 馬橋 262
平成20年 東北地方整備局北上川ダム総合管理事務所 四十四田ダムオリフィス主ゲート 342
関東地方整備局 川口橋 4,770
木戸橋 5,430
北陸地方整備局 信濃川水門主ゲート2号 2,370
中部地方整備局 静清飯田天王高架橋 7,230
名古屋高速道路公社 20-1工区 8,600
20-2工区 9,400
20-3工区 14,800
橘JCT(Dランプ)工区 6,230
都心環状線工区 5,460
都心環状線工区 11,030
楠JCT(Dランプ)工区 6,230
秋田県公営企業課 八幡平発電所水圧鉄管外面 2,205
秋田県仙北地域振興局 大盛橋 1,010
田茂木橋 1,040
秋田県由利地域振興局 清水尻橋 1,930
秋田県秋田発電・工業用水道事務所 板戸発電所水圧鉄管内面 336
平成21年 名古屋高速道路公社 東山線(新洲崎工区) 6,390
楠線(萩野通工区) 10,080
中部地方整備局三重工事事務所 内鈴鹿大橋 5,650
近畿地方整備局九頭竜ダム統合管理事務所 九頭竜ダム洪水吐設備扉体 1,860
長野県長野建設事務所 小市橋 1,305
北陸地方整備局信濃川下流河川事務所 蒲原大堰外ゲート設備 4,262
水門等 4,464
北陸地方整備局新潟国道事務所 千歳大橋 4,907
秋田県由利地域振興局 飛鳥大橋 1,500
東北地方整備局秋田河川国道事務所 田沢湖生保内沢地内〜角館町小勝田地内 7,849
東北地方整備局岩手河川国道事務所 水沢管内橋梁 359
秋田県公営企業課 八幡台発電所サイフォン橋 132
東北地方整備局岩手河川国道事務所 二戸管内橋 5,560
東北地方整備局三陸国道事務所 久慈大橋 9,990
秋田県横手市 戸波橋 2,530
中部地方整備局名古屋国道事務所 知立刈谷地区橋梁 3,690
日特建設叶V潟支店 千歳大橋 10,076
平成22年 名古屋高速道路公社 楠線(大我麻町工区) 11,860
都心環状線(大井工区) 16,250
都心環状線工区 5,666
北陸地方整備局信濃川河川事務所 水門等塗替塗装工事 2,120
秋田県雄勝地域振興局 秋ノ宮大橋 1,950
秋ノ宮大橋 1,910
秋ノ宮大橋 1,660
秋ノ宮大橋 1,910
秋ノ宮大橋 1,950
秋田県由利地域振興局 長泥橋 724
秋田県雄勝地域振興局 新川井橋 1,500
秋田県由利地域振興局 飛鳥大橋 1,450
飛鳥大橋 2,170
平成23年 名古屋高速道路公社 楠鋼毛桁・高欄等(五反田工区) 4,902
西日本高速道路滑ヨ西支社 関西国際空港連絡橋 13,762
中部地方整備局名古屋国道事務所 寛政高架橋橋梁 8,260
東北地方整備局岩手河川国道事務所 盛岡地区橋梁 3,200
北陸地方整備局信濃川下流河川事務所 蒲原大堰主ゲート外 510
蒲原大堰主ゲート設備 510
北陸地方整備局金沢河川事務所 度金沢管内橋梁 1,650
秋田県産業労働部公営企業課 茨島水管橋 3,900
杉沢発電所水圧鉄管及び鉄管水路 2,522

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高塗着スプレー塗装「施工管理技術者」、「技能者」の養成

 「高塗着スプレー塗装工法」により、「機械化による施工能率及び塗装品質の向上」を図ることが可能となりましたが、このシステムにより良好な塗膜を作るためには、 「静電塗装に関係した知識や技術」、「施工管理・安全管理の方法」、「塗装方法(塗装機、ガンの操作その他)」等を十分習熟している優れた技術者、技能者が必要となります。
 当協会では、高塗着スプレー塗装工事に要求される専門的な知識と安全性等の施工管理能力を有する「高塗着スプレー塗装施工管理技術者」認定試験の実施、 「高塗着スプレー塗装技能者」認定講習会の開催等を通じて、技術者及び技能者の養成を図り、「高塗着スプレー塗装工法」の普及促進に努めています。

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